「通信陸上」はなぜ「通信」?名前の由来と歴史を分かりやすく解説

多くの中学生アスリートにとって、夏の全国中学校陸上競技大会(全中陸上)への第一歩となる「全日本中学校通信陸上競技大会」。この大会、通称「通信陸上」ですが、「なぜ『通信』って名前なんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?

この記事では、「通信陸上」という名前の由来と、その背景にある歴史について、分かりやすく解説します。

「通信陸上」とは? まずは基本情報を確認

正式名称

全日本中学校通信陸上競技大会 (ぜんにほんちゅうがっこう つうしんりくじょうきょうぎたいかい)

大会の位置づけ

この大会は、各都道府県で開催される中学陸上の都道府県大会としての性格を持ちます。そして最も重要な役割の一つが、8月に行われる全国中学校陸上競技大会(全中陸上)の都道府県代表選手を選考する予選会であることです。多くの場合、この大会で各種目の優勝者や標準記録突破者が、全中陸上への出場権を獲得します。

なぜ「通信」と呼ばれるのか? その歴史的背景

「通信」という名前の由来は、この大会が始まった当初の運営方法にあります。

大会創設期の状況 (戦後、移動の困難さ)

「通信陸上」が始まったのは戦後間もない1955年頃と言われています。当時は現在のように交通網が発達しておらず、全国の中学生が一同に会して大会を行うことは、経済的にも時間的にも非常に困難でした。

「通信」による全国ランキング

そこで考え出されたのが、各都道府県で同時期に同じ基準で競技会を開催し、その結果(記録)を中央の集計機関に送付するという方法でした。

  • 各都道府県で競技会を実施
  • 記録を集計し、郵便や電信などで中央へ報告(=通信)
  • 中央で全国の記録を集計し、ランキングを作成・発表

このように、選手が実際に一箇所に集まるのではなく、各都道府県から送られてきた記録を「通信」によって集め、それをもとに全国規模での順位付けや評価を行っていたのです。

名前の直接的な由来

つまり、「通信陸上」の「通信」とは、物理的に選手が集まる代わりに、各都道府県大会の記録(データ)を通信手段(郵便、電信など)を用いて送付し、集計・比較していたという、大会創設時の運営形態そのものを指しているのです。

現在の「通信陸上」の役割

都道府県大会としての機能

現在では交通網も発達し、全中陸上のように全国から選手が集まる大会が普通に行われるようになりました。そのため、創設当初のような「通信による全国ランキング」という役割は薄れています。

しかし、「通信陸上」という名前は歴史的な名称として残り、現在では各都道府県における中学陸上の最高峰の大会として、また全中陸上への予選会として、非常に重要な位置づけを担っています。

全中陸上への道

多くの選手にとって、この「通信陸上」で好成績を収めることが、夏の全中陸上への切符を掴むための最大の目標となります。大会のレベルも非常に高く、毎年多くの好記録が誕生しています。

まとめ

「通信陸上」の「通信」とは、大会が始まった戦後の時代に、全国の選手が一箇所に集まることが難しかったため、各都道府県で実施した大会の記録を郵便などで中央に送り(通信し)、集計していた歴史的な運営方法に由来します。

現在ではその運営方法は変わりましたが、大会の名称は残り、各都道府県の中学陸上の頂点を決める大会、そして全国大会への登竜門として、今も中学生アスリートたちの熱い戦いの舞台となっています。

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