近年、市民ランナーの増加に伴い、マラソンや駅伝といった長距離走にチャレンジする人が増えています。多くの人は、長距離走には持久力さえあれば良いと考えているかもしれません。しかし、長距離ランナーにとって筋力トレーニングは、パフォーマンス向上、怪我予防、ランニングエコノミーの向上に不可欠です。
この記事では、スポーツ科学の専門家としての知見を踏まえ、長距離ランナーと筋力トレーニングの関係性について解説していきます。
なぜ長距離ランナーに筋トレが必要なのか?
長距離走では、長時間にわたり同じ動作を繰り返すため、筋肉や関節に大きな負担がかかります。
その負担に耐えうる筋力がないと、フォームが崩れやすくなり、怪我のリスクが高まります。
また、長距離を走るには、効率的にエネルギーを使うことも重要です。筋力が不足すると、無駄な動きが増え、エネルギー消費量が増加してしまいます。
筋力トレーニングを行うことで、以下のような効果が期待できます。
- 持久力向上: 強い筋肉は、疲労しにくく、より長い時間走り続けることができます。
- 怪我予防: 筋肉は、着地したときの衝撃をクッションのように吸収してくれます。 筋力トレーニングによって筋肉や関節が強化され、ランニング中の衝撃を吸収しやすくなるため、怪我のリスクを軽減できます。
- ランニングエコノミー向上: ランニングエコノミーとは、一定の速度で走るために必要な酸素消費量のことです。筋力トレーニングによってランニングエコノミーが向上すると、同じペースで走ってもエネルギー消費を抑えられ、より長く走れるようになります。
- スピードアップ: 筋力強化によって、地面を強く蹴り出す力を得ることができ、ストライドを伸ばすことができます。
- フォームの安定化: 体幹が安定することで、ランニングフォームが安定しやすくなります。
- ハムストリングスの強化: ハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)の横断面積が大きいほど、長距離走のパフォーマンスが高いという研究結果があります。
長距離ランナーにおすすめの筋トレ
長距離ランナーにおすすめの筋力トレーニングは、自重トレーニングとウェイトトレーニングです。
自重トレーニング
自重トレーニングとは、自分の体重を利用したトレーニングです。特別な器具を必要とせず、自宅でも手軽に行えるのがメリットです。
長距離ランナーは、体幹を鍛えることが重要です。 体幹が強いと、ランニング中の姿勢が安定し、効率的な動きが可能になります。また、体幹トレーニングは、怪我の予防にも効果的です。
ウェイトトレーニング
ウェイトトレーニングとは、ダンベルやバーベルなどの器具を使ったトレーニングです。より高負荷なトレーニングを行うことができ、筋力アップに効果的です。
従来、持久系スポーツの筋力トレーニングといえば、「軽負荷で高レップ」(軽い重量で回数を多く行う)という方法が一般的でした。しかし、近年の研究では、「高負荷&低レップ」(重い重量で回数を少なく行う)の方が、パフォーマンス向上に効果的であることが示されています。
長距離ランナーにおすすめのウェイトトレーニング
- スクワット: バーベルを肩に担いで行うスクワットは、高負荷で下半身全体を強化することができます。
- デッドリフト: バーベルを床から持ち上げるデッドリフトは、全身の筋肉を鍛えることができます。
- ベンチプレス: ベンチに仰向けになり、バーベルを上下させるベンチプレスは、胸の筋肉を鍛えることができます。
筋トレの効果を高めるポイント
筋力トレーニングの効果を高めるためには、以下のポイントに注意することが大切です。
- 正しいフォームで行う: 間違ったフォームで行うと、怪我のリスクが高まるだけでなく、効果も半減してしまいます。例えば、スクワットで膝が内側に入ってしまうと、膝関節に負担がかかり、怪我のリスクが高まります。
- 適切な負荷をかける: 軽すぎる負荷では効果が薄く、重すぎる負荷では怪我のリスクが高まります。初心者の方は、まず自分の体重でできる自重トレーニングから始め、徐々に負荷を上げていくようにしましょう。
- トレーニング後は十分な休息をとる: 筋肉は、トレーニング後、休息をとることで成長します。トレーニング後は、十分な睡眠をとり、栄養補給を心がけましょう。
- 栄養補給: 筋肉の成長には、タンパク質や炭水化物などの栄養素が不可欠です。トレーニング後は、プロテインやバナナなどを摂取することで、筋肉の回復を促しましょう。
初心者ランナーが筋トレを始める際の注意点
初心者ランナーが筋力トレーニングを始める際は、以下の点に注意しましょう。
- 無理のない範囲で始める: 最初は、少ない回数や軽い負荷から始め、徐々に強度を上げていきましょう。
- 体幹トレーニングを重視する: 体幹が安定することで、ランニングフォームが安定し、怪我の予防にもつながります。
- ストレッチ: トレーニング前後にストレッチを行うことで、筋肉の柔軟性を高め、怪我の予防に役立ちます。
- 適切な頻度と強度: 週2~3回程度の頻度で、無理のない強度で行いましょう。
- 休息: トレーニング後は、筋肉を休ませるために、十分な休息をとりましょう。
まとめ
長距離ランナーにとって、筋力トレーニングはパフォーマンス向上、怪我予防に欠かせないものです。
筋力トレーニングによって、持久力向上、怪我予防、ランニングエコノミー向上、スピードアップなどの効果が期待できます。
初心者ランナーの方は、無理のない範囲で、体幹トレーニングを重視しながら、筋力トレーニングを行いましょう。
この記事で紹介した筋力トレーニングや注意点を参考に、ぜひトレーニングに取り入れてみてください。