ランニングマシンのパネルにある「傾斜」ボタン。使ったほうがいいのか、それとも0%のままでいいのか、迷う方は少なくありません。
実は、この傾斜設定は単なる「おまけ」ではなく、トレーニングの質を劇的に変える精密なコントロールスイッチです。なぜ傾斜が必要なのか、そのロジカルな理由と具体的な活用法を解説します。
1. なぜ「傾斜1%」がスタンダードなのか
ジムのトレーナーや経験者が「まずは1%に設定して」と言うのには、明確な理由があります。
- 空気抵抗の再現: 屋外を走る際は、常に体に風(空気抵抗)が当たります。無風状態の室内マシンでは、この抵抗がない分、外より「楽」に走れてしまいます。これを補正するのが「1%の傾斜」です。
- 着地衝撃の緩和: 完全なフラット(0%)よりも、ごくわずかな傾斜がある方が、ロードに近い自然な重心移動ができ、結果としてスムーズな足運びをサポートします。
結論: 外を走る感覚を大切にしたいなら、**「1.0% 〜 2.0%」**が基本のスタート地点です。
2. 「速度を上げる」か「傾斜を上げる」か
強度を上げたい時、どちらのボタンを押すべきか迷いますよね。判断基準は**「関節の保護」と「運動の目的」**にあります。
- 速度アップを優先: 足の回転数(ピッチ)を高めたい、あるいはフォームのキレを追求したい場合に向いています。ただし、速度に比例して着地時の衝撃が強まるため、関節への負担は増大します。
- 傾斜アップを優先: 着地衝撃を抑えつつ、心拍数を上げたい場合や、脂肪燃焼を優先したい場合に向いています。低速でも高い負荷をかけられるため、怪我のリスクを抑えながら追い込むことが可能です。
3. 【目的別】傾斜・速度の設定ガイド
マシンの前で迷わないための、実践的なシミュレーション表です。
| トレーニングの種類 | 推奨傾斜 | 推奨速度 | 設定の狙い |
| スタンダード・ラン | 1.0% 〜 2.0% | 普段の走速 | 屋外の負荷を正確にシミュレート |
| パワーウォーキング | 5.0% 〜 8.0% | 5.0 〜 6.5km/h | 走らずに効率よくエネルギーを消費 |
| ヒルクライム(山登り) | 10.0% 以上 | 3.0 〜 5.0km/h | 下半身の筋出力を集中的に強化 |
4. 傾斜トレーニングを台無しにする「2つの落とし穴」
① 手すりを掴んでしまう
傾斜を上げるとつい手すりを持ちたくなりますが、これは厳禁です。手すりに体重を預けると、本来足にかかるべき負荷が30%以上逃げてしまいます。**「手すりを持たずに歩ける(走れる)角度」**が、今のあなたにとっての適正な傾斜です。
② 靴紐の緩みと足首への負担
傾斜がつくと足首の角度が変わり、ふくらはぎやアキレス腱へのストレッチ強度が上がります。
- トレーニング前に靴紐をしっかり締め直すこと(足が靴の中で遊ばないようにするため)。
- 慣れないうちは、一気に上げず「0.5%ずつ」刻んで調整すること。この2点を守るだけで、トラブルを未然に防げます。
5. まとめ:今日から「▲ボタン」を一押しする
ランニングマシンの傾斜は、単に運動を「きつくする」ためのものではなく、トレーニングを「正確」にするためのツールです。
迷ったらまずは「1%」。もし「今日は少し物足りないな」と感じたら、速度を上げる前に傾斜を「+1%」してみてください。それだけで、いつものトレーニングがより濃密な時間に変わるはずです。





