全世界のランニングシューズ市場は、2025年に約542.3億ドルに達し、2029年までに約700億ドル規模へ成長すると予測されています。本レポートでは、主要なランニングシューズメーカー11社の技術革新と、日本市場における劇的な変遷を詳述します。
- 1. 日本のランニングシーン:平成から令和へのパラダイムシフト
- 2. 主要ランニングシューズメーカー10社の徹底分析
- ① アシックス (Asics):圧倒的ラインナップの国内王者
- ② ミズノ (Mizuno):技術力で再起を狙う「眠れる巨人」
- ③ ナイキ (Nike):カテゴリーを再定義するパイオニア
- ④ リーニン (Li-Ning):中国から来た「黒船」の衝撃
- ⑤ オン (On):ビジネスシーンへも浸透するスイスの革新
- ⑥ ブルックス (Brooks):アメリカの「アシックス」
- ⑦ アディダス (Adidas):スーパートレーナーの確立
- ⑧ ホカ (Hoka):マキシマリズムの先駆者
- ⑨ ニューバランス (New Balance):最高のフィッティング
- ⑩ サッカニー (Saucony):120年の歴史と幾何学
- ⑤ プーマ (Puma)
- 3. メーカー別・テクノロジーと市場背景の比較表
- 4. 総括:2026年、ランナーが直面する「贅沢な選択」
1. 日本のランニングシーン:平成から令和へのパラダイムシフト
日本の長距離界におけるランニングシューズの歴史は、この十数年で劇的な変貌を遂げました。
- 平成の常識:国内二強と薄底の時代かつて、日本のトップランナーはミズノの「ウエーブエキデン」やアシックスの「ソーティマジック」といった薄底・軽量モデルを愛用していました。筆者自身も中学で陸上を始めた際、最初はアディダスを履き、その後は信頼の国内メーカーであるアシックス、ミズノを履き継いできました。当時は「外資系は壊れやすい」といったイメージが学生の間で語られていた時代でもあります。

- 令和の変革:ナイキの台頭と多極化ナイキの厚底シューズがトップシーンを席巻したことで、この構図は一変しました。アディダス、アシックスがいち早く追随し、現在ではニューバランス、プーマに加え、ホカやオンといった新興勢力が市民ランナーの間でも「当たり前」の選択肢となっています。

2. 主要ランニングシューズメーカー10社の徹底分析
各メーカーが持つ独自の歴史、技術、そして2025-2026年現在の市場ポジションを分析します。
① アシックス (Asics):圧倒的ラインナップの国内王者

日本が誇る最大手メーカー。
- 特徴: 圧倒的な製品ラインナップを誇り、初心者からエリートまで「必ず自分に合う一足」が見つかる信頼感があります。一方で、モデル数が非常に多いため、自分に最適な一足を選び出すのが大変という側面もあります。
- 技術: 独自の「FF Blast」フォームと、衝撃吸収性に優れた「PureGEL」を融合させ、弾むような走行感を実現しています。
② ミズノ (Mizuno):技術力で再起を狙う「眠れる巨人」

- 特徴: モノづくりの技術とクオリティは世界トップレベル。現在はラインナップや売り出し方に「迷走」が見られるとの指摘もありますが、製品の質は間違いなく一級品です。今後の広告戦略やラインナップの整理次第では、劇的な復活を遂げる可能性に大きな期待が寄せられています。
- 技術: 構造的安定性を生む「Mizuno Wave」と、高反発素材「MIZUNO ENERZY」が核。
③ ナイキ (Nike):カテゴリーを再定義するパイオニア

- 特徴: 厚底ブームの火付け役。2025年は「Vomero 18」を最大クッションの柱とし、記録更新のための「Vaporfly 4」を頂点に据えるなど、製品の簡素化と専門化を進めています。
- 技術: PEBAベースの「ZoomX」フォームによる史上最高のエネルギー帰還率。
④ リーニン (Li-Ning):中国から来た「黒船」の衝撃

- 特徴: 大迫傑選手が着用して日本記録(2時間4分56秒)を樹立したことで一躍話題に。家電のハイアールや電気自動車のBYDのように、圧倒的な開発スピードでシェアを急拡大させる可能性を秘めています。
- 技術: 独自開発のPEBAフォーム「Beng(䨻)」と高グレードカーボン「T1000」を採用。
⑤ オン (On):ビジネスシーンへも浸透するスイスの革新

- 特徴: 洗練されたデザインにより、ランニングだけでなくビジネスシーンでもスーツに合わせて着用する姿が多く見られるようになりました。
- 技術: コンピュータ解析による「CloudTec Phase」が、ドミノ倒しのような滑らかな体重移動を実現。
⑥ ブルックス (Brooks):アメリカの「アシックス」

- 特徴: 日本では馴染みが薄いかもしれませんが、本国アメリカでは長い歴史を持ち、**市民ランナーから圧倒的なシェアを得ている「アメリカのアシックス」**とも言える存在です。
- 技術: 膝の不自然な動きを抑制する「GuideRails(ガイドレール)」技術でランナーの怪我を防止。
⑦ アディダス (Adidas):スーパートレーナーの確立

- 特徴: レース技術を日常に落とし込んだ「Adizero EVO SL」など、カーボンなしでも圧倒的な反発を得られるモデルで高い支持を得ています。
- 技術: 耐久性と反発性を両立した「Lightstrike Pro」フォーム。
⑧ ホカ (Hoka):マキシマリズムの先駆者

- 特徴: 分厚いソールと「メタロッカー」構造により、膝や腰に痛みを抱えるランナーやウルトラランナーから絶大な信頼を得ています。
- 技術: 車のバケットシートのように足を包み込む「アクティブ・フットフレーム」。
⑨ ニューバランス (New Balance):最高のフィッティング

- 特徴: アーチサポートの歴史から、足幅(ウィズ)展開が非常に豊富。あらゆる足型に対応するフィット感の権威です。
- 技術: モチモチとした加速感を生む「FuelCell」と安定の「Fresh Foam X」。
⑩ サッカニー (Saucony):120年の歴史と幾何学

- 特徴: 世界最古のブランドの一つ。独自の「SPEEDROLL」テクノロジーにより、勝手に足が前に出るような推進力が特徴です。
- 技術: 用途に応じて配合を変える「PWRRUN」シリーズ。
⑤ プーマ (Puma)

「誰でも履けるみんなの厚底」を掲げ、急速に存在感を高めているブランド。窒素ガスを注入した独自の「NITRO FOAM(ニトロ フォーム)」は、高い反発性と軽量性を両立。「DEVIATE NITRO(ディヴィエイト ニトロ)」シリーズは、カーボンシューズの入門編としても絶大な人気を誇ります。近年は日本の大学駅伝チームへのサポートも強化しています。
3. メーカー別・テクノロジーと市場背景の比較表
| メーカー | 特徴・ポジション | 代表技術 | 2026年の注目点 |
| Asics | 圧倒的な選択肢 | PureGEL / FF Blast | 必ず合う一足が見つかる信頼感 |
| Mizuno | 技術はトップ、戦略に期待 | MIZUNO ENERZY | 迷走を終え、復活の狼煙を上げるか |
| Nike | 厚底の絶対王者 | ZoomX | 記録更新を狙う全ランナーの基準 |
| Li-Ning | 大迫傑・日本記録更新 | Beng (䨻) | 中国メーカー特有の超速開発 |
| On | ビジネス&ランニング | CloudTec Phase | オンオフを問わないスタイルの確立 |
| Brooks | アメリカのシェアNo.1 | GuideRails | 「アメリカのアシックス」としての安心感 |
4. 総括:2026年、ランナーが直面する「贅沢な選択」
2026年現在、ランニングシューズ選びはかつての「日本勢独占」から、グローバルな強豪が独自の哲学を競い合う時代へと進化しました。
アシックスの安心感、ブルックスの歴史、オンのスタイル、そしてリーニンの衝撃的なスピード感。私たちランナーは、自身の足型やライフスタイルに合わせて、かつてないほど贅沢な選択肢の中から「最高の一足」をメーカーの垣根を越えて選ぶことができるのです。





