アシックス「SONICBLAST 2」は、トップアスリート向けのカーボンレーシングモデルと、日常用のデイリートレーナーの中間に位置する「スーパートレーナー」です。
【結論】
本モデルは、Mペース(マラソンペース)からTペース(閾値走)でのスピードトレーニングにおいて、脚関節や筋肉への物理的な負荷を最小限に抑えつつ、高い反発性を発揮するシューズです。
46mmという規格外のスタックハイト(ソール厚)と樹脂製プレートの組み合わせにより、レース本番(非公認)から日常のポイント練習まで、スピードと衝撃吸収性の両立を求めるランナーに高いトレーニング効果をもたらします。
1. スペック・基本仕様と前作からの進化
上層に高反発素材、下層に安定性素材を配置した二層構造のミッドソール設計が特徴です。
基本スペック
| 項目 | 詳細 |
| 価格 | 22,000円(税込) |
| 重量 | 約242g(27.0cm片足) |
| スタックハイト | ヒール約46mm / 前足部約38mm |
| ドロップ | 8mm |
| ミッドソール | 上層:FF TURBO SQUARED(高反発) 下層:FF BLAST MAX(安定性) |
| 内蔵プレート | ASTROPLATE(Pebax樹脂製・フォーク形状) |
| アウトソール | ASICSGRIP |
前作からの構造的進化
初代モデルで課題とされた「接地の硬さ」と「重量」に対して、物理的な構造変更による改善が施されています。
- 大幅な軽量化: 46mmのスタックハイトを維持しながら、片足あたり約14gの軽量化(256g→242g)を実現。スピード維持に必要なエネルギー消費を削減します。
- プレート形状の変更(剛性の最適化): 内蔵プレート(ASTROPLATE)が平面形状から、中央部分が開いた「フォーク形状」に変更されました。これにより、着地時に前足部中央のフォーム(FF TURBO SQUARED)が垂直方向へ深く圧縮されるスペースが確保され、前作の過度な剛性感(硬さ)が解消されています。
- アッパーの改良: エンジニアードメッシュの構造が見直され、通気性の向上と、トゥボックス(つま先周辺)の適切な空間確保が図られています。
2. 足入れ感・サイズ感(走る前のフィーリング)
フィッティングとホールド性
ウィズ(足幅)はスタンダード(2E相当)です。アッパーのエンジニアードメッシュは伸縮性が高く、中足部を均一な圧力でホールドします。前足部には適度な空間があり、長距離走行による足のむくみが生じた際も、指先の圧迫を回避する設計です。
ヒール部分は、樹脂製カウンターを過剰に使用せず、上部へ広がるフレア形状を採用しています。アキレス腱への摩擦を防ぎながら、踵の抜けを確実に抑制します。
サイズ選びの基準
アシックスの標準的なラスト(足型)設計に準拠しています。NOVABLASTやGEL-KAYANOなどの同ブランドの他モデルと同サイズを選択して概ね問題ありません。極端な幅広・甲高の場合は、アッパーの過度な伸長を防ぐため、実寸計測と試着を推奨します。
3. 実走レビュー:ペース別の走行感と接地特性
内蔵された樹脂プレートと二層フォームの挙動は、入力される荷重(ペース)によって明確に変化します。
ペース帯別の走行感
- スロージョグ〜Eペース(5:30〜6:30/km):着地時の荷重が小さい低速域では、樹脂プレートを十分に屈曲させることができず、シューズ全体の剛性が高く(硬く)感じられます。下層のFF BLAST MAXにより横ブレは抑制されますが、反発性が強すぎるため、疲労抜きを目的としたリカバリージョグにはオーバースペックです。
- Mペース〜Tペース(4:00〜5:00/km):本領発揮前傾姿勢で重心を前方へ移動させると、フォーク形状のプレートが屈曲し、上層の高反発フォームが深く圧縮されます。直後にプレートの復元力とフォームの反発力が合わさり、強い推進力に変換されます。カーボンプレート搭載モデルのように強制的にピッチを上げられる感覚はなく、ストライドが自然に延長される挙動を示します。
- ショートインターバル・流し(3:30/km〜):フォームの復元速度が速く、接地時間の短い速度域でもレスポンスの遅延はありません。ただし、3:00/kmを切る絶対的なスピード域では、242gという重量が純粋な軽量レーシングモデル(150g前後)と比較して慣性質量としての負担になります。
着地タイプ別のフィーリング
- フォアフット / ミッドフット着地: 前足部中央の圧縮と復元を直接的に推進力へ変換できます。アシックス独自のロッカー形状により、重心の前方移動がスムーズに行われます。
- ヒールストライク着地: 46mmの厚みを持つ踵部分が強い衝撃吸収性を発揮します。内蔵プレートが左右のブレを制御するため、フォームが崩れた際も足首への物理的負荷を軽減します。
4. 類似・競合シューズとの違い
アシックス同ブランド内での位置づけ
- vs NOVABLAST 5/6(プレートなし・約253g):NOVABLASTはデイリートレーナーの基準となるモデルです。SONICBLAST 2は、そこに樹脂プレートと高反発フォームを追加し、推進力を強化した「上位互換的なスピードトレーナー」と言えます。
- vs MAGIC SPEED 4(カーボンプレート・約196g):MAGIC SPEEDは薄さ、軽さ、硬さを備えたスピード特化モデルです。クッション性(保護機能)よりも反発の鋭さを優先する場合に選択します。
- vs SUPERBLAST 3(プレートなし超厚底・約239g):SUPERBLASTはクッションの沈み込みがより大きく、接地感がマイルドです。反発力による推進力よりも、長距離ジョグにおける脚の保護と万能性を求める場合に適します。
他社競合モデルとの違い
- vs Nike Zoom Fly 6(カーボンプレート・約247g):Zoom Fly 6はカーボンプレートによる高い剛性と強い反発力が特徴です。対してSONICBLAST 2は樹脂プレートを採用しているため、足底腱膜やふくらはぎへの物理的な反発負荷が低く、怪我のリスクを抑えやすい設計です。
- vs Adidas Adizero Boston 13(グラスファイバー・約255g):Boston 13は接地時の硬度が高く、カッチリとした安定性を持ちます。SONICBLAST 2はより軽量であり、垂直方向へのフォームの圧縮と復元による反発力が強く設計されています。
5. まとめ:どんなランナーにおすすめか
SONICBLAST 2が適する用途・ランナー像
- サブ4〜サブ3.5目標のランナー: レース本番(非公認)および距離走用のシューズとして。
- サブ3レベルのシリアスランナー: Mペース走、ロングインターバル、閾値走用のトレーニングシューズとして。
- 質の高い練習と脚の保護を両立したいランナー: 46mmのクッションによる衝撃吸収性で、高強度なポイント練習翌日の筋肉痛を軽減したい場合。
運用上の注意点
- エリートレースの規定超過: スタックハイトが46mmあるため、世界陸連の規定(上限40mm)を超過しています。陸連登録者が記録公認を目指す公式レースでは使用できません。
- 低速域での硬さ: リカバリージョグなど低速域ではプレートの硬さを感じるため、クッション性に特化した柔らかいデイリートレーナーとの履き分け(ローテーション)が論理的です。
SONICBLAST 2は、スピード養成に必要な推進力と、過酷なトレーニングから脚を保護する衝撃吸収性を、極めて高いレベルで両立した構造設計を持っています。ペース設定と用途を明確化して運用することで、日々のトレーニング効率を最大化する一足です。

