On Cloudrunner 3 徹底レビュー|実走してわかった真のポテンシャルと欠点

オン

ランニングシューズにおける「安定性(スタビリティ)」の定義が、大きく変わりつつあります。かつての硬い素材で無理やり矯正するスタイルから、構造と幾何学的なデザインで自然にガイドする形へ。

その進化の最前線にあるのが、On(オン)の最新作**「Cloudrunner 3(クラウドランナー 3)」**です。

10kmを34分台で走る私の視点から、このシューズを実際にテスト走行し、そのダイナミクスと身体感覚を徹底的に分析しました。「単なる初心者向け」という言葉では片付けられない、このシューズの真実を語ります。

Cloudrunner 3 テクニカルスペック

まずは、基本スペックを確認しておきましょう。

項目詳細データ
ミッドソール素材Helion™ スーパーフォーム
ドロップ(オフセット)8mm
重量(27.5cm相当)約 310g – 317g
スタビリティ機能クアドラント型幾何学構造 / TPUヒールクリップ
価格(税込目安)18,000円〜20,000円前後

実走インプレッション:速度域で変わる「接地感」の正体

10km 34分台のペースを基準に、リカバリーからポイント練習に近い速度まで段階的にビルドアップして感じた「生の声」をお届けします。

1. 低速域(キロ 6:00 – 8:00):圧倒的な「予測可能性」

ジョギングや疲労抜きのリカバリーで走ると、このシューズの本質がすぐに分かりました。接地した瞬間、Onらしい「雲の上」という感触よりも、**「揺るぎない大地」**に足が着くような感覚が勝ります。

Helion™フォームは沈み込みが深すぎず、芯のある硬さを維持しています。ミッドソールのサイドウォールが高く設計されているため、足がシューズの中にスッポリ収まる「バケットシート」のような安心感があり、左右のグラつきを物理的にシャットアウトしてくれました。

2. 中速域(キロ 4:30 – 5:30):30km LSDの相棒として

デイリートレーニングのペースに上げると、一貫性のあるリズムが生まれます。前作の10mmから8mmに下がったドロップの影響か、より自然なミッドフット着地へと導かれる感覚があります。

反発性は「爆発的」ではなく、あくまで**「穏やか」**です。CloudTec®の空洞が適度につぶれて戻る際、フォームを崩さない程度の推進力を提供してくれます。脚を過剰に刺激しないため、長時間走っても疲労が蓄積しにくい。キロ5分前後で距離を稼ぐ練習には、これ以上の「守護神」はないと感じました。

3. 高速域(キロ 4:00以下):10km 34分ランナーとしての限界点

正直に言いましょう。キロ4分を切るペースまで上げると、このシューズは「重い鎧」に変わります。

Helion™フォームの反発弾性の欠如が顕著になり、路面にパワーを吸い取られるような感覚(エネルギーロス)を抱きました。約310gの重量は足首に遠心力としてのしかかり、ピッチを上げようとするほど「シューズと戦っている」ような抵抗感があります。この速度域では、安定のための広いソールベースが逆に「分厚い板」の上で走っているような感覚を強め、路面情報が遮断されてしまうのが難点です。


構造分析:プレミアムなフィット感と改善点

ラグジュアリーな足入れ感

特筆すべきは、**10.1mmという極厚のシュータン(ベロ)**です。一般的なシューズが6mm程度であることを考えると、その差は歴然。スエード調のアクセントが効いたシューレースシステムにより、紐を強く締めても甲に痛みが一切出ず、「マシュマロで包まれている」ような感覚です。

進化したヒールホールド

新設計の大型TPUヒールクリップは、踵の骨を外側からガッチリとホールドします。着地時に不自然なねじれが起きないよう、物理的に「ロック」されている安心感は、疲労が溜まった後半のフォーム崩れを劇的に防いでくれます。


メリットとデメリット

メリット(ここが良い!)

  • 鉄壁の安定性: サイドウォールとヒールクリップにより、着地が全くブレない。
  • 極上の快適性: 厚手のパディングとシュータンにより、長時間の着用でもストレスフリー。
  • 自然な足運び: ヒールベベルの再設計により、踵から中足部への移行が非常にスムーズ。
  • 耐久性の向上: アウトソールがフルカバー化され、On特有の「石噛み」が解消された。

デメリット(ここは注意!)

  • 反発力の不足: スピードを求める場面では、接地感が「死んでいる」ように感じることがある。
  • 濡れた路面に弱い: 通常のアスファルトは問題ないが、濡れたマンホールやタイルでは急に滑る感覚がある。
  • フィット感の曖昧さ: パディングが厚すぎるため、足幅が狭い人は内部で微細な「遊び」を感じる可能性がある。
  • 重量感: 310g超えは、現代のデイリートレーナーとしてはやや重い部類に入る。

競合他社モデルとの比較

同じ「安定性」を謳うライバル機と比較してみました。

モデル名特徴ライド感の比較
On Cloudrunner 3幾何学的スタビリティ硬めで予測可能。守備力に特化。
ASICS GT-2000 133Dガイダンスシステムより軽く、蹴り出しにキレがある。汎用性高。
Brooks Adrenaline GTS 23ガイドレール介入が自然で、クッションがより「しっとり」している。
Saucony Guide 17センターパス・テクノロジー安定感は強いが、もっと「跳ねる」楽しさがある。

結論:Cloudrunner 3は「誰」が履くべきか?

10kmを34分で走るようなシリアスランナーにとって、このシューズは「ポイント練習用」ではありません。しかし、以下のようなシーンでは代えの効かない最強のツールになります。

  1. リカバリージョグの専用機: 脚がボロボロの日、1mmのブレも許したくない時の「究極のセーフティシューズ」として。
  2. 体重のあるランナー: 柔らかすぎるクッションを潰し切ってしまう方に。芯のあるHelion™が支えになります。
  3. ランニング初心者: 怪我を防ぎつつ、正しい着地をシューズに「教えてもらいたい」方に。
  4. ライフスタイル兼用: 立ち仕事やジムなど、24時間履き続けたいデザイン性と快適性を求める方に。

Cloudrunner 3は、速さを追うための道具ではなく、「走り続ける自信」を担保するためのインフラです。何も考えずに足を前に出せる贅沢を、ぜひ体感してみてください。

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