「ジョグこそ、最もシューズ選びが難しい」
10kmを34分台で走るようになると、リカバリーやデイリージョグの質が翌日のポイント練習を左右することを痛感します。今回、アシックスの定番がフルモデルチェンジしたということで、**GEL-CUMULUS 28(ゲルキュムラス 28)**を徹底的に履き倒しました。
単なる「優等生な練習靴」から、走りをエキサイティングに変える一足へと進化したその実態をレポートします。
GEL-CUMULUS 28 基本スペック
| 項目 | 詳細データ | 技術的注釈 |
| ミッドソール | FF BLAST MAX | 高弾性・低密度の新素材 |
| 緩衝材 | PureGEL (内蔵型) | 従来比 65% ソフトな組成(踵部) |
| ヒールドロップ | 8 mm | ニュートラルで自然な接地を促進 |
| 重量 (27.0cm) | 約 301 g | 素材刷新によりボリューム増でも軽量を維持 |
| アッパー | エンジニアードジャカードメッシュ | 段階的な伸縮性を持つ高機能素材 |
| 価格 (税込) | 16,500円 | コストパフォーマンスに優れた設定 |

実走インプレッション:ペース別に見える「二面性」
私の走力(10km 34分台)を基準に、リカバリーからテンポランまで、入力エネルギーの違いによる挙動の変化を解析しました。
1. リカバリージョグ(6’30″/km 〜 8’00″/km)
「高密度な流体に包まれる安心感」
走り出しの一歩目で驚いたのは、その包容力です。低速域では、新素材「FF BLAST MAX」の気泡がゆっくりと潰れ、足裏の圧力を完全に分散してくれます。特に疲労が溜まった日のヒールストライク(踵着地)では、内蔵されたPureGELが衝撃をいなし、角の取れたマイルドな接地感を提供してくれました。
2. デイリージョグ(5’00″/km 〜 6’00″/km)
「リズムが自動化されるバウンス感」
最も感動したのがこのペース帯です。荷重が増すにつれ、ミッドソールが急速に形状を復元しようとする「反発」が顔を出します。前作(27代目)よりも足離れが格段に良くなっており、中足部から前足部への重心移動が極めてスムーズです。カーボンプレートのような「強制的な推進」ではなく、自分のキックを増幅してくれるような、自然で弾む感覚が得られました。
3. テンポラン・ビルドアップ(4’00″/km 〜 4’30″/km)
「デイリートレーナーの域を超えたスナップ感」
34分台ランナーにとって、このペースは「流し」に近い感覚ですが、CUMULUS 28はここでも「もたつき」を感じさせません。FF BLAST MAXは強い荷重を受けても潰れ切らず、一歩一歩を力強く押し返してくれます。厚底ゆえの重心の高さはありますが、トレーニングの仕上げに行うウインドスプリントまで対応できるポテンシャルを秘めています。

構造分析:フィット感と「剛・柔」のバランス
アッパーとホールド感
新採用のエンジニアードジャカードメッシュは、足を入れた瞬間に「シルキー」だと感じました。摩擦が少なく、足とシューズが一体化する感覚です。
特に注目すべきは、ヒール部の変更です。プルタブが廃止されましたが、内部のアンクルパッドが増量されており、踵が浮く感覚は皆無です。物理的なロックというよりは、**「パッドで優しく包囲して固定する」**という贅沢なホールド感に進化しています。
安定性を生む「バケットシート構造」
ソールの厚みが増しているにもかかわらず、左右のグラつきが少ないのは、ミッドソールのサイドウォールが高く設計されているからです。足がソールの中に沈み込むような構造になっており、筋肉が弛緩したジョグでも、シューズが正しい軌道をガイドしてくれる安心感があります。
メリット・デメリットの総括
実走テストを経て見えた、本モデルの強みと弱みを整理します。
メリット(Pros)
- 圧倒的なエネルギーリターン: FF BLAST MAXによる、ジョグが楽しくなるバウンス感。
- 洗練されたフィット感: 摩擦の少ないアッパーと、隙間のないヒールホールド。
- 高いコストパフォーマンス: 16,500円で最新のフラッグシップ素材を体感できる。
- 汎用性の高さ: リカバリーからテンポ走まで、これ一足で完結できる守備範囲。
デメリット(Cons)
- 耐久性のトレードオフ: 高反発・低密度ゆえ、400km走行付近から初期のバウンス感が徐々に減退する懸念。
- 雨天時のグリップ力: 濡れたマンホールや白線の上では、接地面積の広さが災いして滑りを感じることがある。
- 足型の相性: アーチ(土踏まず)付近がやや高く設計されており、扁平足気味のランナーには圧迫感が出る可能性。
競合モデルとの比較
他ブランドの主要デイリートレーナーと、私の主観的な比較をまとめました。
| 比較項目 | GEL-CUMULUS 28 | Nike Pegasus 42 | Brooks Ghost 17 |
| ライド感 | ソフトかつ強力な反発 | やや硬質でレスポンス重視 | 一定した安定感と柔らかさ |
| エネルギー効率 | 極めて高い | 標準的 | 標準的 |
| 得意なペース | ジョグ〜テンポラン | テンポラン〜スプリント | リカバリー〜LSD |
| ドロップ | 8 mm | 10 mm | 10 mm |
結論:このシューズは「買い」か?
GEL-CUMULUS 28は、かつての「地味で無難な練習靴」という皮を脱ぎ捨て、テクノロジーによる高揚感を提供する一足へと変貌を遂げました。
10km 34分台のシリアスランナーにとっても、日々のジョグの質を高め、脚を保護しながら効率的に距離を稼ぐための「最高のパートナー」になると断言できます。
特に、**「最近のジョグに退屈さを感じている人」や、「厚底の恩恵は欲しいが、NOVABLASTほどの不安定さは避けたい人」**に強くおすすめします。耐久性や雨天時のグリップという細かな課題はありますが、FF BLAST MAXがもたらす「重力からの解放感」は、それらを補って余りある魅力です。





