ブルックス Glycerin MAX 2 徹底レビュー|実走してわかった真のポテンシャルと欠点

シューズ

2026年、ランニングシューズ市場の「厚底競争」は一つの到達点を迎えました。その中心に鎮座するのが、ブルックスが満を持して投入したGlycerin MAX 2です。

200ドルという強気のプレミアム価格と、45mmという圧倒的なスタックハイト。この「怪物級」の一足が、日々のトレーニングをストイックにこなすランナーの足に何をもたらすのか。実際にアスファルトの上で限界まで試した「生の声」をお届けします。


ブルックス Glycerin MAX 2:主要スペック一覧

項目詳細仕様
重量(27.0cm)311g – 332g(個体差あり)
スタックハイト45mm / 39mm(ドロップ6mm)
ミッドソール素材DNA Tuned(窒素注入デュアルセル構造)
アッパートリプルジャガード・エアメッシュ
市場価格200ドル / 約31,000円(為替による)
推奨用途リカバリー、LSD、超長距離、故障明けのジョグ

実走インプレッション:ペースで激変する「二面性」

1. リカバリーペース(6:30/km以上)

足を通した瞬間、**「地面との絶縁」**を感じます。アスファルトのざらつきや小石の存在は、45mmの極厚ソールによって完全に消し去られます。

着地感は「沈み込む」というより、強固なクッションが「どっしりと受け止める」感覚。前作のような柔らかすぎるマシュマロ感は影を潜め、より構造的な安定感が際立ちます。ハードな練習の翌日、脚を徹底的に労わりたい時にはこれ以上の選択肢はありません。

2. デイリージョグ(5:00 – 6:00/km)

少しペースを上げると、GlideRoll Rocker(グライドロール・ロッカー)が本領を発揮します。ソールの反り上がりが絶妙で、意識せずとも身体が前へコロンと転がり出すようなガイドを感じます。 一方で、このあたりから「310g超」という重量が明確な存在感を放ち始めます。特にジョグの後半、疲労が溜まってきたタイミングで脚を持ち上げる際、物理的な重さがじわじわとエネルギーを削っていく感覚は否めません。

3. テンポアップ(4:30/km以下)

さらに出力を上げると、正直に言って「巨大な重機を操縦している」ような感覚に陥ります。

前足部の高密度セルが反応を返そうとはしてくれますが、シューズ全体の慣性が勝り、ピッチを上げるにはかなりの筋力を要求されます。エネルギーが厚いフォームに吸収され、反発がワンテンポ遅れて戻ってくる「ラグ」も感じました。このシューズは、スピードを競うための道具ではなく、「ダメージを最小限に抑えて距離を稼ぐ」ためのプロフェッショナルなツールだと断言できます。


構造の核:進化した「DNA Tuned」の恩恵

ミッドソールには、窒素を注入して発泡させた最新のDNA Tunedが採用されています。

特筆すべきは、一つのソールの中に「異なるサイズの気泡」を共存させている点です。

  • 踵(大型セル): 着地時の衝撃を分散し、関節へのダメージを無力化する。
  • 前足部(小型セル): 密度を高めることで、蹴り出し時の安定したプラットフォームを確保する。

この役割分担により、厚底にありがちな「グラつき」が抑えられ、まるでレールの上を走っているような高い直進安定性が実現されています。


フィット感:贅沢すぎるほどの包容力

アッパーの進化は、今作の白眉といえるポイントです。

  • プレミアムな質感: 踵やシュータンには通常の2倍近い厚みのパディングが充填されており、足入れ感は高級ホテルのソファのようです。
  • ホールド性の向上: 新採用の「トリプルジャガード・エアメッシュ」は組織が細かく、前作で指摘されていた「走行中のアッパーの伸び」が解消されています。
  • 鉄壁のヒールカウンター: 45mmという高い位置に足が置かれていますが、踵のホールドが強固なため、コーナリングでも足が靴の中で遊ぶことはありません。

避けては通れない「3つの懸念点」

実際にテストしてわかった、購入前に覚悟すべきポイントです。

  1. 熱のこもり: アッパーの贅沢な厚みは、通気性とトレードオフです。気温が15℃を超える環境では、走行30分ほどで足裏に熱が滞留し、蒸れによる不快感が生じます。
  2. 内アーチの干渉: サイドウォールが高い構造のため、土踏まずの形状によっては、10kmを過ぎたあたりで「擦れ」による痛みを感じる可能性があります。
  3. 重量の壁: 311gは、軽快なステップを好むランナーには明確なハードルとなります。

競合マックスクッション機との比較

モデル名性格主な強み弱み
Glycerin MAX 2不沈艦圧倒的な安定感・保護性能重い、通気性が低い
ASICS Superblast 2万能選手軽さ(249g)と反発のバランス保護性能ではブルックスに一歩譲る
Nike Vomero PlusエンターテイナーZoomXの弾む楽しさ不安定さを感じることがある

結論:このシューズは「走ることをやめない」ための投資

Glycerin MAX 2をどう定義すべきか。

これは「速く走るためのシューズ」ではありません。**「怪我のリスクを最小限にし、明日もまた走り出すための防具」**です。

メリット

  • 45mm厚がもたらす、他を寄せ付けない衝撃吸収性。
  • 疲労困憊の状態でも脚を前へ進めてくれるロッカー構造。
  • 1,000km走ってもヘタらないと言われる、圧倒的な耐久性。

デメリット

  • スピード練習には不向きな重量感。
  • 夏場のロングランでは致命的になりかねない熱のこもり。

効率とタイムを追求する局面では選ばないかもしれません。しかし、月間走行距離を伸ばしたい時、あるいは激しいポイント練習の合間を繋ぐ「守りの走り」が必要な時、これほど心強い味方は他にいません。200ドルの投資は、痛みを知らない快適な数百キロという形で、十分すぎるほど回収できるはずです。

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